ムクツナ前提、ネタバレ情報あり、注意。
「IF Story デイモンにもしツナも操られたら」
「ん~、流石はボンゴレ十代目。
ここまで生き残るとは」
全てが終わり、真実が明るみになった。
しかし、本当の裏切り者であるデイモンに敵う者などおらず、綱吉を残して全滅した。
「くそっ!デイモン、お前に罪の意識はないのか!!」
「罪?フハハハ!!全て必要だからこそしたことですよ」
綱吉が地を這い蹲りながらデイモンに訴えるが、デイモンはそれを笑い飛ばした。
「これで、ボンゴレもシモンも共倒れ、私を止める者はもういない」
「?何をする気だ!」
「この体では役不足なので、新しい体を手に入れるだけですよ。
『六道骸』という絶好の体をね」
「骸…だと?」
綱吉の頭を過ぎるのは、優しい骸の笑顔。
デイモンに体を奪われたら、本当は優しい彼を、このままではまたマフィアの抗争に巻き込んでしまう。
「骸は渡さない!!」
綱吉は最後の力で、デイモンの足にしがみついた。
「う~ん、そういえば、君も六道骸に繋がる入り口となりえる器でしたね」
「?」
そんな必死な綱吉を他所に、デイモンは考え込んだ。
「君は確か、ボンゴレ十代目でありながらマフィア殲滅をうたった六道骸と恋仲になるという、実に私のボンゴレを侮辱する行動ばかりを行ってきた。
しかし、それはそれで利用出来る」
デイモンは指を鳴らすと、いつのまにか綱吉の後ろに回ったクロームが綱吉を羽交い絞めにして抱き起こした。
「クローム?」
現状を理解できない綱吉を、無理矢理デイモンが顎を掴み上げて自分の視線と合わせた。
「クローム、決して放してはいけませんよ」
「はい、デイモン様…」
「なっ、何をする気だ!!」
綱吉がクロームから放れようと必死にもがくが、デイモンに操られたクロームの腕力は凄まじいもので振りほどけない。
「さあ、沢田綱吉。
僕に服従しなさい」
デイモンの瞳に映るスペードのマークが、綱吉の自我を奪おうとする。
「や、やめろ!!」
朦朧とする意識の中、綱吉は必死に抵抗する。
しかし、デイモンの瞳から眼を離せない。
「さあ、沢田綱吉、私に従いなさい」
「やめろーー!!!」
最後の叫び声も空しく、綱吉の意識はそこで途絶えた。
******
骸は、クロームと十年後に飛ばされた時のように彼女と連絡のとれなくなったことを不審に感じていた。
――凪だけではない。
綱吉君の気配も感じない。
これは一体どういうことだと頭を悩ませていると
「「骸(様)!!」」
急に接触不良が回復したかのように、2人同時に精神世界に現れた。
綱吉が右側、クロームが左側に抱きついて離れない。
にっこり笑って骸のほうを見る2人の瞳が澱んでいることに気づいたときはもう遅かった。
「綱吉君、クローム!君たち誰に操られている!!」
「う~ん、流石は私が認めた男。
よく、私の洗脳に気づきましたね」
「貴様は!!」
骸の前に現れたのは、十年後の記憶で見た初代霧の守護者、デイモン・スペード。
「君の体は、私が有効活用してさしあげます。
君は安心して、彼らと一緒にこの世界にいればいい」
「なに!?」
デイモンが、両目にスペードのマークを映し骸をも洗脳しようとする。
「この六道骸をなめるな!!」
しかし、骸は己の六道輪廻の能力を駆使して身を護った。
「う~ん、なるほど、そうきましたか…
だが、君の体の権利は私が奪いました。
君の言い回しで言えば、『契約成立』というとこでしょうね」
「しまっ!」
身動きのとれない骸を尻目に、デイモンは不敵な笑みを浮かべて手を振った。
「では六道骸、精々そこの2人とこの世界を楽しむことですね」
「デイモン・スペード!」
骸が怒りを露わにしたが、デイモンは既にそこにはいなかった。
******
――……んっ、僕はどうしたんだ。
骸が気がつくと、そこは寝室だった。
隣には、恋人である綱吉が小さな寝息を立てている。
昨晩は無理をさせてしまったので、綱吉も疲れているだろう。
骸は綱吉を起こさぬように注意して上体を起こすと、静かに扉が叩かれた。
「骸様、ボス、朝ごはん出来ました」
クロームが起こしに来たようだ。
「う~ん…、分かった」
綱吉もその言葉に反応にして、目を覚ます。
「骸、おはよ」
「おはようございます、綱吉君」
おはようのキスをして、いつものようにクロームの待つであろう食卓へ向かう。
――いつもの?
そういえば、こんな日々はいつからだったろう。
不意に骸の頭に疑問が過ぎるが、綱吉の笑顔で吹っ飛んでしまった。
「骸、ず~と一緒にいようね」
「はい、綱吉君」
骸は忘れてしまっていた。
ここがデイモンによって作られた世界ということを。
あの時、骸は完全に術を防いだわけではなかった。
少しずつ、デイモンの洗脳は骸の精神を浸食していき、精神世界に閉じこめた。
骸は知らないのだ。
綱吉とクロームによって作られた、幸せな世界に縛られてしまって。
自分たちの体が、どんな扱いを受けているのかを。
全てはデイモンの思い通りに進んでいるのを。
Fin
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掲載が遅くなってしまい、本当にすみません。
素敵なお話をありがとうございました!!!