永遠の大空



表紙


絵サンプル



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木の影から出てきたのは全身触手の化け物だった。全長三メートルほどの巨大生物。その禍々しい姿に思わず生唾を飲み込む。
「気持ち悪いですね…」
隣の骸もさすがに顔をしかめている。しかし呆然としているのもつかの間、その化け物は一気にこちらに迫ってきた。さらに身体より先に伸びてきた触手を二人は間一髪で左右に跳んでかわす。再び二人が今の今までいたところはジュウと音を立てて溶けた。
「このっ…」
ツナは地面に足を着けるのと同時に振り返って、その触手化け物を睨みつけた。が、そこで違和感に気づく。
「あれ…?」
炎が…使えない。というか、使い方が分からない。
「????」
いきなり目の前に突きつけられた現実に、頭の中が真っ白になる。今まで自分はどのように炎を灯して戦ってきたのだったか。
どのように…?そんなこと考えたことがなかった。何も考えなくても使えたから…
なのに今、何故か考えても考えてもどうすれば炎が使えるのか分からない。
「綱吉くん危ない!」
呆然と突っ立っていたツナは骸の叫び声でハッと我に返った。いつの間にか目の前に迫る触手の渦。固まってしまっているツナを突き飛ばすようにして庇ったのは、先ほど反対側に跳んだ骸だった。その勢いのまま二人して転がり、木の幹にぶつかってやっと止まる。
「い、いったい何やってるんですか!」
すぐさま起きあがった骸が困惑と怒りの混じった顔でツナを睨んだ。気のせいではなく、その顔は青ざめている。
「ど、どうしよ…俺、戦えない…」
カタカタ震えながら涙目で骸を見上げれば、骸は一瞬無表情になったが次の瞬間、ふっ、と不敵に笑った。
「それならここで休んでいてください。」
そう耳元で囁くと、すぐにスッと立ち上がる。その手にはいつの間にか愛用の三叉槍が握られていた。
「巡りなさい、輪廻の果てまで。僕たちを狙ったこと、後悔するがいい。」



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「とりあえず冗談じゃありません。」
「へっ…わぁ!?」
骸はツナの手を引くと、裏路地へと飛び込んだ。後ろから「子どもを寄こせ!!」と誰かが叫んだが、振り返らずに狭い道を走り続ける。しかし、よく分からないが身体がだるい。それに、目が霞む。身体が熱い。頭もぼぉっとしてきたが、ツナの手を握る力だけは緩めずに、骸は一つ角を曲がったところにあった、ドアが少し開いた倉庫らしき中に飛び込んだ。飛び込むと同時に後ろ手にドアを閉める。隣でぜいぜい息を切らして座り込むツナを横目に見て、骸も腰を下ろした。なんだろう、これは。身体の熱はどんどん上がっていくようだった。

「ま、まいた…かなぁ?」
不安そうに骸を見上げてくるツナに、返事をすることが出来なかった。それどころではない。自分にはやるべきことがある。…何を?そんなことは決まっている…
頭はますます靄がかかったように思考を妨げる。そんな頭の中を支配しているのは、ただ一つのことだけだった。それだけが全て。自分がすべき、こと。
「む、骸…?」
いきなり黙ってしまった骸に、ツナは困惑を隠せずにいた。どうしたのだろうか?調子が悪いのだろうか?顔の前で手をひらひら振ってみても、反応がない。無表情にこちらを見てくるだけ。ツナは少し怖くなって後ろに後退ろうとした…が、その前に骸に両肩を掴まれて地面へと押しつけられた。
「痛っ!ちょっ…骸、何す…………むく?」
乱暴に硬い地面に押し倒されたツナが抗議の声を上げるが、骸を見た途端ギクリとなった。骸の目…どう見ても正気を失っている。操られている…?…いや、違う。
「骸っ!やだっ、骸ってば!!」
起き上がろうとするが、骸は逃げられないように上に覆い被さってきた。さらにツナの両手首を片手で掴み頭上に持って行き、手の自由までも奪ってくる。その自分を覗き込んでくる骸が、不意にニコリと微笑んだ。
「子ども作りましょう、綱吉くん。」
「は!?」



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